前回の記事では、視覚から住まいをととのえる方法についてお話ししました。今回は、私たちの日常の行動や感覚に深く関わる**「触覚」**に焦点を当てていきます。
「なんだか足元が冷える」
「この床、滑りやすいな」
「いつも通る場所がごちゃついていてストレス」
日々の生活の中で、小さな不快感を感じていませんか?
床や壁の素材、そして家の中での「動きやすさ」は、私たちの身体的な快適さだけでなく、心のゆとりにも直結します。
今回は、そんな「触れるもの」と「動くこと」から、住まいを心地よくととのえるヒントをお届けします。
素足が喜ぶ!自然素材がもたらす心地よさ
私たちは、毎日無意識のうちに様々な素材に触れています。床の感触、壁の質感、ドアノブの手触り…。
これらの「触覚」が、実は私たちの気分やリラックス度合いに大きく影響を与えていることは感じられますか?
木の床、珪藻土の壁…触れて感じる癒し
化学製品やビニールクロスに囲まれた空間よりも、自然素材に囲まれた空間の方が心が落ち着く、と感じる方は少なくないと思います。
- 無垢フローリングの魅力:

無垢の木製フローリングは、足裏に心地よい温かみと柔らかな感触を与えます。
冬は冷えにくく、夏はベタつきにくいという調湿効果も持ち合わせており、一年を通して快適です。
また、時間とともに経年変化することで風合いが増し、加えて愛着がわくのも大きな魅力です。
転倒時の衝撃吸収性も、クッションフロアや合板フローリングよりも期待できる場合があります。
- 珪藻土や漆喰の壁:
これらは自然由来の素材で、湿気を吸放湿する機能を持つため、室内の湿度を快適に保つ効果があります。
また、調湿効果だけでなく、消臭効果やシックハウス症候群の原因となる化学物質を吸着・分解する効果も期待できます。
触れるとザラッとした独特の質感があり、視覚的にも温かい印象を与え、
室内の空気感が「ととのう」感覚を味わえます。
- 天然素材のファブリック:
カーテンやソファカバー、クッションなどにコットン、リネン、ウールなどの天然素材を取り入れることも、肌触りの心地よさを感じられ、五感を刺激します。
視覚的な温かさ・柔らかさだけでなく、実際に触れた時の優しい感触がリラックス効果を高めます。
お手入れも楽に!シニア世代に優しい素材選び
「自然素材は魅力的だけど、お手入れが大変なのでは?」という心配をしていますか。
最近では、シニア世代でも無理なくお手入れできる、機能性と美しさを兼ね備えた素材が増えています。
- 滑りにくい床材: 水回りの床材には、滑りにくい加工が施されたタイルや表面に凹凸加工を施した無垢床材を選ぶことで、転倒リスク軽減につながります。
また、リビングなどでも、浮造り無垢材や適度な摩擦を生む塗装を施すこと、あるいは天然素材カーペットなども検討に値しますね。 - 汚れにくい加工: 最近の壁材や床材には、汚れが付きにくい、あるいは拭き取りやすい加工が施されたものも多くあります。これらを賢く選ぶことで、日常のお手入れの負担を軽減できます。
特筆すべきは、珪藻土壁や漆喰壁は静電気を発生させないので汚れを吸い寄せることがなく、自然に汚れてしまうことはありません。
また、汚れたらDIYで上から重ねて塗ってしまえば済むことです。 - メンテナンスのしやすさ: 素材を選ぶ際には、専門業者による定期的なメンテナンスが必要か、自分で簡単にできる手入れで十分かなど、長期的な視点でのメンテナンス性も考慮することが大切です。
ストレスフリーな毎日へ!「動線」をととのえる工夫
住まいの「動線」は、日々の暮らしの快適さを大きく左右します。
特にシニア世代になると、わずかな段差や家具の配置が、大きなストレスや転倒のリスクになることもあります。
家事も移動もラクラク!理想の動線とは
「動線」とは、人が家の中を移動する道筋のことです。家事動線(料理、洗濯、掃除など)、生活動線(起床から就寝まで)、来客動線など、様々な動線があります。
理想的な動線とは、

- 無駄な動きが少ない: 最短距離で移動できること。
- スムーズな移動: 障害物がなく、つまずきにくいこと。
- プライバシーの確保: 来客があっても、生活空間が丸見えにならないこと。
などが挙げられます。
例えば、キッチンからダイニング、さらに洗濯機や物干し場へと続く動線がスムーズだと、家事の負担が大きく軽減されます。
今すぐできる!家具配置の見直しで快適な歩行スペースを確保
大掛かりなリフォームをしなくても、家具の配置を見直すだけで動線は劇的に改善できます。

- 通路幅の確保:
普通の木造住宅であれば廊下の有効幅は約75㎝です。決して広くはないので、できるだけ物を置かないことが、スムーズな移動に繋がります。どうしても置く場合はできるだけ背の低いものにしましょう。
- 家具の数を減らす・多機能家具の活用:
どうしても物が増えてしまいがちなシニア世代ですが、不要な家具は思い切って処分したり、収納機能付きのベンチやテーブルなど、一つの家具で複数の役割を果たす多機能家具を取り入れることで、スペースを有効活用し、動線をすっきりさせることができます。
- 使用頻度の高いものを近くに置く:
よく使う食器や調理器具はキッチンの作業台の近くに、普段着る服は寝室のクローゼットの手前に、といったように、使用頻度に応じて収納場所を見直すことで、無駄な移動を減らせます。
- つまずきやすいものをなくす:
カーペットの端、電気コード、観葉植物の鉢など、床に置かれたつまずきやすいものは極力なくすか、壁際に寄せるなどして、転倒リスクを減らしましょう。
【元工務店社長のアドバイス】小さな変化が日常を豊かに
素材を変えるプチリフォームも、動線の見直しも、最初は「大変そう」と感じるかもしれません。しかし、一時の辛抱で、ほんの小さな改善が日々の「イライラ」や「不便さ」を解消し、心にゆとりをもたらします。
あなたの住まいの「小さな不快感」が、実は「ととのえ」のヒントを隠しています。
ぜひ、ご自身の住まいを注意深く観察してみてください。
まとめ:触覚と動線で感じる、新たな快適さ
住まいの素材と動線は、私たちの身体感覚と日々の快適さに深く関わっています。
自然素材の心地よさを取り入れ、ストレスなく移動できる動線を整えることで、毎日の暮らしはよりスムーズで、心豊かなものへと変えることができます。
楽しんで「ととのえて」いきましょう!


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